■気仙沼大島の若きカキ漁師
気仙沼大島で代々続くカキ漁師の家で育った涼太さん。
12年前の東日本大震災で家族は無事だったものの、津波で家やカキの養殖いかだと加工場を失いました。震災後、涼太さんの父・博文さんは残った漁船でカキ養殖を再開し、10年かけ水揚げ量を震災前の水準まで近づけました。
その姿を見てきた涼太さんは地元の高校卒業後漁師に。
数年前から涼太さんの家では、カキの養殖に昔ながらの方法を取り入れました。
「カキの天日干し」です。
海中からカキを引き揚げ2日間船の上で日にさらし再び海に戻す、これを年3回繰り返す養殖法。
カキほど生命力が強くないムール貝やホヤなどは死んでしまうため、カキだけに栄養がいく。そして日にあてることでアミノ酸の味が出てうま味が増します。
かつて気仙沼地域ではこの養殖法が盛んでしたが、手間と時間がかかることなどから廃れ、島内で天日干しを行っているのは涼太さんの家だけです。
おととし、このカキを『島の日干し牡蠣(がき)』と名付け、本格的に販売をスタート。
水揚げ量が少なく、まだ市場に出回っていないことから幻のカキとも呼ばれています。
そのおいしさを知ってもらうため、涼太さんは近隣の宿泊施設や飲食店でこのカキを使ってもらっています。評判は上々のよう。
涼太さんが本格的に海の仕事に就いて5年目。
いつか父に追いつき追い越し、誰が食べても一番といわれるくらいのカキを作ることが目標。
「自分が作ってるものに納得し、自分がやってることに納得できるような漁師になりたい。」と、ひたむきに海と向き合います。