<評>★★
■生きることに不器用な主人公をデフォルメし、熱く熱く松子が突っ走る前半。逆に、世捨て人のように過ごすその晩年を描く後半。まるで別の映画を観ているように異なるテイストで描かれています。オンとオフのメリハリがはっきりとしているから、「熱い」人生をより熱く感じ、また、映画が終わった後に強く余韻が残るのでしょうか。「人生は祭りのようなもの」と言い切ってしまえばそれまでなのでしょうが、何やら祭りの後の虚脱感にも似た淋しさを感じずにはいられません。作品に出て来る筑後川と荒川それぞれの近くに暮していたこともあり、川面を眺めて望郷の思いに浸る主人公に相当に感情移入してしまいました。映画のモチーフを監督が丁寧に描いているからこそ、素直に感じ入ることができるのではないでしょうか。観る方それぞれに、松子の心を感じる自分だけの材料がきっとあるはずです。〔TBC佐竹〕 |